そこへコガネムシが飛んできて、親指姫を連れていきました。

蝶のりりは、親指姫をそのまま連れて逃げた。

CLICK TO FLY AWAY

← APOCRYPHA CHARACTER 010 / RIRI

APOCRYPHA / FILE NO.010

THUMBELINA — ALTERED STORY

RIRI

りり

「ただのハッピーエンドじゃ
つまらないよね」
ROLE / THE BUTTERFLY WHO STOLE THE ENDING
READ THE STORY ↓
01 / PROFILE

楽しいほうへ飛んでいく、
花蝶族の女の子。

明るく元気で、おしゃべりと自由に飛び回ることが大好き。花や綺麗なものが好きで、花畑で遊び、花の蜜を好む。気になるものがあれば、すぐに近づいていく。

物事を決めるのは「正しいかどうか」より「どっちのほうが楽しそう?」。興味を持てばとことん夢中になり、なくなれば驚くほどあっさり別のものへ飛んでいく。

NAME
りり Riri
MOTIF
『親指姫』
02 / THE REWRITTEN STORY

書き換えられたことで出来上がった物語

こっちのほうが、
面白そう。

書き換えたのは、たった一匹の蝶の気まぐれ。
その瞬間の興味が、決められた結末を連れ去った。

ヒキガエルから逃げた親指姫は、スイレンの葉の上を流されていた。
本来の物語ならば、そこへコガネムシが現れ、親指姫を連れ去る。
やがて野ねずみやモグラに出会い、ツバメと共に暖かい国へ渡る。
そして王子と結ばれて、物語は幸せに終わるはずだった。

しかし、その頁には、いるはずのない蝶が飛んでいた。
名前は、りり。

りりは、花蝶族の女の子だ。
花と蝶の性質を持つ種族で、花畑で遊び、花の蜜を好む。
おしゃべりが大好きで、一か所に留まらず、自由に飛び回っている。

正しいかどうかは、あまり考えない。
どっちのほうが楽しそうか。
りりにとって、大事なのはそれだけだった。

「1箇所に留まらず自由に飛びたいよね」
興味を持ったものにはとことん夢中になり、なくなれば驚くほどあっさり別のものへ移っていく。
花も、綺麗なものも、人間さんも、同じように「気になるもの」だった。

ある日、りりは葉っぱの上に、小さな女の子を見つけた。
女の子は泣いていた。
「なんで泣いているんだろう?」

蝶の羽をひらめかせて、りりはすぐそばまで降りていった。
涙の理由を聞くよりも先に、泣いている顔をじっと見つめていた。

助けてあげようと思ったわけではない。
ただ、気になった。
見ているうちに、りりはこう思った。
この子と一緒にいたら、面白そう。

そこへ、コガネムシが現れた。
親指姫を連れていこうとするその姿を見て、りりは感じた。
せっかく面白そうな子を見つけたのに。

連れていかれることも、そこから物語が進んでいくことも、面白くない。
だから、りりは選んだ。

親指姫をコガネムシに渡さず、そのまま連れて逃げること。

その瞬間から、物語は原作とは違う頁へ進み始めた。

親指姫は、りりと共に旅をすることになった。
野ねずみにも、モグラにも、ツバメにも出会わない。
暖かい国へ行くことも、王子と出会うこともない。
王子と出会う物語そのものが、なくなった。

親指姫がどちらを望んでいたのかを、りりは確かめなかった。
どちらの結末が幸せかではなく、どちらが面白そうか。
それだけで、一冊の童話の行き先が変わってしまった。

りりが選んだのは、親指姫のための幸せな未来ではなかった。
ただ、「こっちのほうが面白そう」という、その瞬間の興味だった。

二人は知らない場所へ飛び、知らない人と出会った。
花畑で遊び、おしゃべりをして、本に書かれていない、自分たちだけの物語を増やしていった。

最初は、泣いていて気になった子。
一緒に過ごすうちに、一緒にいると楽しいから好き、という気持ちが生まれた。
親指姫を、特別扱いしているわけではない。

離れれば、寂しさを感じることもある。
けれど、ずっとそこに留まりはしない。
楽しみがなくなれば、別の場所や別の人へ飛んでいく。
嫌いになったからではない。
りりにとって、楽しいことはひとつじゃないからだ。

自分が連れ去ったことで、王子との未来が消えたことを、りりは理解している。
それを、悪いことだとは思っていない。
「王子様と出会って幸せになる?……それって、そんなに大事?」

決められた結末より、知らない場所へ行き、知らない人と出会うほうが面白い。
未来を奪ったのではない。
つまらない結末を、面白い結末に変えただけ。

「つまらない結末よりこっちの方が面白い!」

りりは、人にも同じように興味を持つ。
相手の表情や感情が変わるのを、見るのが好きだ。
悲しみや怒りでさえ、好奇心の対象になることがある。
どうしてそうなったんだろう。もっと見てみたい。

その先に何が起こるのかを、深くは考えない。
そして興味がなくなれば、執着もあっさりと消えてしまう。
「ふ〜ん、そうなんだ」
その一言で、羽はもう別のほうを向いている。
悪気はない。だからこそ、誰にも止められない。

今日もりりは、楽しいことを探して飛んでいる。
大きな武器も、冒険の話も、不思議な箱も、気になるものは全部近くで見てみたい。
「ねぇねぇ!」と声をかけ、あのね、と話し始める。
おやゆび姫がね、と旅の話が始まれば、もう止まらない。
次に興味を持たれるのは、あなたかもしれない。

「面白いこと、楽しいこと、
たくさん教えて!」

こうして、ハッピーエンドから連れ去られた物語は、誰にも行き先を知られないまま、今も楽しいほうへ飛び続けている。

THE BUTTERFLY STILL FLIES BEYOND THE LAST PAGE.

結末を連れ去った蝶は、
今日も楽しいほうへ飛んでいく。

最初の頁へ戻る ↑