ピーターは、子供であることが楽しくて仕方がない。

「大人になりたくないな」その言葉を、恋人は本気にした。

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APOCRYPHA / FILE NO.007

PETER PAN — ALTERED STORY

LIRIA

リーリア

「大丈夫。私は傍に居るわ。
永遠に…。」
ROLE / THE LOVER WHO WAS NEVER WRITTEN
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01 / PROFILE

永遠を贈った、
ピーターの恋人。

良く言えば天真爛漫で無邪気、悪く言えばわがままで夢見がち。社交的で元気に話すが、ピーターにしか興味がなく、どこか他人を軽んじている。

「リリィ」と呼ぶのは構わないが、「リア」は自分とピーターだけの愛称。他人に呼ばれることだけは許さない。恋バナが大好きで、今日もピーターの話をしにやって来る。

NAME
リーリア Liria
MOTIF
『ピーター・パン』
02 / THE REWRITTEN STORY

書き換えられたことで出来上がった物語

永遠に、
一緒よ。

書き加えられたのは、原作に存在しなかった一人の恋人。
彼女は、何気ない一言を本気にしてしまった。

ピーター・パンは、大人になりたがらない少年だった。
本来の物語で、彼は子供であることが楽しく、幸せで仕方がない。
大人になりたがることなど、理解もできない。
そこには、恋人の姿もない。

しかし、その頁には、原作に存在しなかった一人の少女が書き加えられていた。
ピーターの恋人、リーリアである。

それは、ピーターがまだ、ちゃんと歳を重ねる人間だった頃のこと。
リーリアは一つ歳下の恋人で、髪はピーターと同じ赤毛だった。
華奢な身体に白い肌。
家から出ることも、外の世界と関わることも、あまり考えたことがない。

天真爛漫で、わがままで、夢見がち。
彼女の世界には、ピーターしかいなかった。
「リア」と呼び合う、二人だけの世界だった。

ある日、仕事帰りのピーターは、疲れ切った顔でこぼした。
「大人になりたくないな〜。楽しいことだけして、リアと一緒にいたい」

それは、誰の口からでもこぼれるような、ありふれた弱音だった。
明日になれば、ピーター自身も忘れてしまうような一言だった。

けれど彼女は、それを本気にした。

リーリアは魔女を訪ね、不老不死の薬を買った。
代償は、呪いがひとつ。
自分を愛してくれている人にしか、自分の姿が見えなくなる。

「声も届くし、私にはピーターがいるし関係ないわ!」
彼女は気にする様子もなく、それを受け取った。
そして薬を、ピーターと自分の飲み物に隠し入れた。
大好きな人の願いを、叶えてあげるために。

こうして二人は、不老不死になった。
これで永遠に一緒。
楽しく幸せだったのは、最初だけだった。

ピーターは、本当に歳をとらなくなってしまった自分に、日に日におかしくなっていった。
「こんなの望んでいなかった」
「元に戻してくれ」
そう嘆き、縋り付くピーターに、彼女は微笑んで言う。

「大丈夫。私は傍に居るわ。永遠に…。」

すべての元凶は、飲み物に薬を入れた恋人だった。
ピーターの心から恋は消え、恐怖だけが残った。
その日から、呪いは静かに働き始めた。
ピーターには、もう彼女の姿が見えない。

声だけが、毎日耳元で聞こえてくる。
「永遠に一緒よ」
彼にとって一番恐ろしい言葉を、見えない恋人が囁き続ける。
赤かった彼女の髪は、いつの間にか白くなっていた。
呪いの影響か、老いか、あるいは美貌か。誰にも分からない。

リーリアは、何も気づいていない。
嫌われるなんて、微塵も心配していない。
何で無視するのかしら、最近は体調が悪いみたい。
お前なんて嫌いだと言われても、恥ずかしがっているのだと笑うだけだ。
「またそんなこと言うの…ピーターがリアのことだ〜いすきなの、知ってるんだから!」

「愛? そんなの考えたことないわ! リアとピーターはそーしそーあいなの!」
執着も、奉仕も、ときめきも、運命も、彼女の中では区別がない。
一緒にいるのが当たり前。それだけのことだ。

「そんなの、好きな人と一緒にいたいなんて当たり前じゃない。そんなこともわからないの?」
彼女はただ、ピーターの言葉を信じて、その願いを叶えたかっただけ。
素直で、ピーターしか知らない無知が生んだ物語だった。

リーリアは時々、自分の本を抜け出して、別の本へやって来る。
様々な登場人物が集う場所、APOCRYPHA。
自分の本の外では呪いが働かず、誰の目にも姿が見える。

彼女がここへ来るのは、ピーターの話をするためだ。
読者がピーターを忘れないように。
彼が元気を取り戻したとき、ちゃんと居場所があるように。
あとは、単に惚気たいだけである。

「私はリーリア! 気軽にリリィと呼んでいいわよ!」
けれど「リア」と呼ばれた途端、その声は止まらなくなる。
「リアはダメ。私とピーターだけのなの。やめて。やめて。やめて。」
ウェンディーの名を聞けば頬をふくらませ、大きな音で驚かしてやるのだと無邪気に笑う。

「あんたもピーターの話が聞きたくてここにきたんでしょ!」
恋バナは大好きだ。ピーターの話がたくさんできるから。
同じ名前を名乗る者が現れれば、ふんと鼻を鳴らして、パチモンだと切り捨てる。

今夜も彼女は、弾むような声で話し始める。
「最近ピーターは体調が悪いみたいなの…。ひどいのよ! 全っ然リアのことかまってくれないの!!」
そして話し終えれば、また自分の本へ帰っていく。
姿の見えない部屋で、彼の耳元に、そっと唇を寄せるために。

「永遠に一緒よ。
愛しているわ、ピーター!」

こうして、書かれなかった恋人の物語は、今も終わることなく、同じ言葉を囁き続けている。

THE WHISPER CONTINUES BEYOND THE LAST PAGE.

もう姿の見えない恋人は、
今日も耳元で愛を囁く。

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