猫はそう言い、末の息子に長靴と大きな袋が欲しいと頼んだ。

「主人がこんなもので申し訳ないね…」末の息子は、病を患っていた。

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APOCRYPHA / FILE NO.014

PUSS IN BOOTS — ALTERED STORY

CAMILLE

カミーユ

「僕がみんなを幸せにするよ!
だから、僕の言うことを絶対聞いてね?」
ROLE / THE CHEVALIER WHO MAKES EVERYONE HAPPY
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01 / PROFILE

みんなを幸せにしたい、
騎士の白猫。

フランスの田舎生まれの長毛白猫。人食い鬼を倒した功績で、猫でありながら国のシュバリエに任命された。力よりは頭脳派で、なんでも王様に献上して地位を上げようと奮闘している。

女の子には「美しいね!かわいいね!お姫様みたい!」と優しく、何かを持つ人にはゴマをすり、持たない者には容赦がない。自分のおかげでみんなが幸せになれると、本気で信じている。

NAME
カミーユ Camille
MOTIF
『長靴をはいた猫』
02 / THE REWRITTEN STORY

書き換えられたことで出来上がった物語

みんな、
幸せにするよ。

書き換えられたのは、主人が猫に向けた一言。
主人の病が、一匹の猫に人間への失望を教えた。

粉挽き男は、息子三人を残して死んでしまった。
遺したのは風車小屋、ロバ、そして一匹の猫。
末の息子は、猫をもらった。

本来の物語ならば、末の息子は「猫なんかでは、食べてそれで終わりだ」とガッカリする。
猫は長靴と大きな袋を頼み、機転を利かせて、主人を幸せへと導いていくはずだった。

しかし、その頁は書き換えられていた。
「主人がこんなもので申し訳ないね…」末の息子は、病を患っていた。

猫は、フランスの田舎で生まれた長毛の白猫だった。
粉ひき小屋のネズミ捕りのために、粉挽き男が拾ってきた猫である。
末の息子は、その猫を可愛がっていた。

猫のほうも、人からの愛情には絆されがちだった。
痩せていく手に撫でられるたび、この人のために何かをしてやりたいと思った。
一番目と二番目の息子は、自分たちで働き稼ぐことで精一杯。
末の息子にはどうすることもできず、このままでは死を待つのみだった。

そこで猫は、末の息子のために狩りに出た。
兎を捕り、鳥を捕り、せっせと持ち帰っては、その暮らしを支えた。
長靴も、大きな袋も、頼みはしなかった。

病の主人の生活は、一匹の猫の働きで成り立つようになった。
猫はそれを、当たり前のこととしてやり続けた。

その様子を見た兄たちは、面白くなかった。
働きもしない末の息子が、自分たちよりも良い生活をしている。
妬ましく思った二人は、末の息子から猫を取り上げようとした。

その猫は父が遺したものだ、俺たちにも権利がある。
兄たちはそう言い立て、村の者たちまで巻き込んでいった。
争いは兄弟の中から、村の中へと広がった。
あの猫さえいれば。あの猫を手に入れれば。
誰もが、猫を欲しがり始めた。

猫は、その争いを見ていた。
自分で動ける体を持っているのに。
既に良いものを与えられているのに。
何も成そうとせず、奪い合うばかりの人間たち。
病の主人を案じる者は、誰ひとりいなかった。

猫は人間に失望し、そして、哀れんだ。

そのとき、猫はひとつの答えにたどり着いた。
みんなが猫を欲しがっている。
みんなが猫に幸せを期待している。

「そう…そうか、みんなが僕を必要としているなら! 僕がみんなを幸せにするよ!」

「だから、僕の言うことを絶対聞いてね?
そうでなければ、君たちはみんなみーんな、みじん切りなんだから♪」
そして猫は、地位と富を求めて、みんなを幸せにするための旅を始めた。

猫は人食い鬼を倒し、その功績で国のシュバリエに任命された。
猫でありながら、騎士である。
力で勝ったのではない。言葉巧みに鬼をおだて、油断させて仕留めたのだ。
カミーユという名の白猫は、力よりも頭を使って、ここまで上り詰めた。

なんでも王様に献上し、さらに地位を上げるために奮闘している。
見た目は十八ほどの青年だが、生まれてからはまだ三年ほど。
自分でも性別はよく分からず、多分オスだと思っている。

何かを持っている人には、とことん下手に出る。
「やあやぁ♪ 今日はあなた様の為に贈り物をご用意したのですっ!」
女の子には「美しいね! かわいいね! お姫様みたい!」と、フランスの男らしく優しい。

けれど、労働者や平民には、良いものを持っていないか確かめるだけだ。
「これはお前の物〜? ふーん」
そして取り上げた品を、別の誰かへの贈り物として差し出していく。
「これ、あの方が来たら『カミーユ様から頂いたものです!』って言っておいてよ!」
すべては、みんなの幸せのために。

自分のおかげで、みんなが幸せになれる。
実際に、そうみんなに期待されている。
だから、自分の言うことは絶対に聞くべきだ。
カミーユは、それを少しも疑っていない。
断る者がいれば、心から不思議そうに首をかしげる。
どうして幸せになりたくないの、と。
今日も笑顔で帽子を押さえ、次の献上品を探して歩いていく。

「でないとお前のこと、
細切れにしちゃうからね〜」

こうして、長靴を頼まなかった猫の物語は、みんなの幸せという名のもとに、今も頁を切り刻みながら進んでいる。

THE CAT STILL WALKS BEYOND THE LAST PAGE.

みんなを幸せにしたい猫は、
今日も献上品を抱えて歩いていく。

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